研究概要 |
本研究では,前という言葉によって指し示される場所を分析することで,建築空間を構成する壁,柱,家具といった要素の組み合わせによってできる方向性の分析を行い,法則性を見出すことを目的とする。本年度の研究によって得られた成果を以下に示す。 1 実験方法の整備 本研究での実験手続きは,多数の位置データの計測作業が伴う。その精度と迅速性を確保するため,計測データを計算機へ簡便に取り込むための実験装置について整備を進めた。具体的には,実験時に被験者の指示する位置を画像データとして取り込み,その画像データより位置関係のデータを計測するシステムを考案し,その開発を進めた。 2 2要素構成空間での方向性分析 同形状の2個の円柱を並べたものについて,前の位置を質問する実験を行った。その結果,前の位置は2個の円柱の位置を結ぶ直線上と,それに直交する,2個の円柱の位置の垂直2等分線上となることが明らかになった。これより1個では方向性が感じられない物体が,2つ並べられることにより,直交する4方向の方向性を持つようになることがわかった。以上の法則性は通常感覚的に理解されていることであるが,本研究での方法を用いることにより,前の位置という観察可能なかたちでとらえることができた。 3 2要素構成空間の方向性仮説モデルの構築 実験で得られた,2個の要素によって構成される空間の方向性の法則性について,これを説明可能な方向性仮説モデルの検討を進めた。
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