研究概要 |
本研究では前という言葉によって指し示される場所を分析することで,建築空間を構成する壁,柱,家具といった要素の組み合わせによって生じる方向性の分析を行い,その法則性を見出すことを目的としている。本年度は以下の項目について研究を進めた。 1 3要素以上で構成される空間の方向性分析 空間要素を2つ以上とした場合など,様々な空間構成で生じる方向性についての法則性について検討した。個々の要素については方向性を生じない物体であっても,それらの配置によって方向性が生じること確認し,要素の配置が対称性を持つ時に明確な方向性が生じることを確認した。 2 複数要素から構成される建築空間の方向性の仮説モデルの構築 複数の空間要素から構成される空間において出現する方向性について,それを説明可能とするモデルの構築について検討を行った。 3 異文化での方向性分析の可能性検証と文化的差異の分析 韓国語を母国語とする留学生に対し,物体の方向性の有無と日本語の前に相当する言葉の使用について分析を行い,日本語において確認され衣方向性の有無と前の言葉の使用の関係が,韓国語においでも成り立っているかどうかを分析した。韓国語においても,方向性のある物体について判断される前に相当する方向は被験者の位置に依存しないことを確認し,日本語の場合と同様の法則性が成り立っていることを確認した。また,韓国語における方向性に相当する概念は,日本語における正面性と近いといった方向性に関する文化的な差異もうかがうことができた。
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