本研究は痴呆性高齢者の環境行動を理解するための基礎的な知見を得ることが目的である。環境行動全般を捉えることは不可能と考え、「食事」に着目した調査と分析を試みることにした。研究にあたり、痴呆性高齢者の日常生活を客観的に捉えるために、(1)高齢者居住施設に住まう痴呆性高齢者の一日の環境行動の追跡記述調査(昨年度から継続。調査は2000.3)を行った。また、在宅の痴呆性高齢者の日常の概要を知るためにグループホーム入居予定の高齢者と家族に日常生活全般に関するインタビューを行った。次に、「食事」行動に着目した調査として、(3)特別養護老人ホーム2ケ所(うち一つはユニットケアタイプ)とグループホームーケ所において、食事時間を中心としたビデオによる環境行動の記録を試みた。同時に、(4)会話可能な居住者に対して日常的な「食」に関する環境行動に関するアンケート調査を行っている。記録を概観すると観察を行った特別養護老人ホームにおける痴呆性高齢者の多くは、対人的環境、物的環境ともに関係を持つことが少なく、食事の時間は通常の時間帯よりもかえって関わる対象が希薄である人も多い。(5)施設における食事は個人的な生活様式や世代の持つ様式との違いや人びとの食をめぐる記憶を知り、以上の結果と併せて分析をするために、現在その点に関するインタビュー調査を進めているところである。
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