研究概要 |
本研究では、仮想の火災空間の避難を再現することに加えて、身体機能が低下する高齢者の立場で健常者が避難を体験・実験できるシステムの構築を最終目的とする。 平成12年度は、研究の初期段階として、1.バーチャルリアリティを用いた避難シミュレータの構築、2.シミュレータの有効性の評価、3.高齢者の加齢による身体能力の低下に関する既存の調査研究の整理を行った。 ○1.シミュレータの構築 本シミュレータでは、磁気センサをつけたHead Mounted Displayを装着する事により、リアルタイムに目を向けた方向の仮想避難空間の体験が可能である。操縦桿型コントローラによって、任意の方向に移動する。仮想空間内では、実写画像を天井・床・壁面に表示することにより、高い現実感が得られる。火災時に発生する炎・煙はパーティクルアニメーションとして表示される。自分以外の避難者も実写画像で形成されるオブジェクトとして表示され、あらかじめ設定された経路に従って移動する。 ○2.シミュレータの有効性を評価 仮想空間と現実空間の感覚の違いを明らかにするために奥行き感に関する2つの検証実験を行った。その中で、奥行き距離の実験では、被験者前方3m,9m離れた地点において実空間とVR空間の適合度が高く、平均と設置値との差は0.17m,0.26mである。これは建築空間での避難実験に対しては、支障ない値であると判断できる。仮想空間におかれた玉の前後関係を見る実験では、正答率はもっとも近い球が91%、もっとも遠い球が80%と高く最近、最遠の判別は容易であることが明らかになった。 ○3.高齢者の身体機能に関する調査研究の整理 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)および、(社)人間生活工学研究センター(HQL)を中心に高齢者の身体機能低下に関する研究を整理した。またシミュレータでの動作パラメータ設定の基礎資料とした。 平成12年度の成果を論文としてまとめ、日本建築学会にて発表した。
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