本年度は、日本の伝統的住居の中からアイヌの住居、沖縄の伝統的住居を調査し、以下のような空間構造を明らかにした。 アイヌの住居(チセ)の空間構造の特徴として、いろりを囲んで3つの座として、空間が分節されている。入口から一番遠い奥側にロルンソ(上座)があり、上座の奥の壁には神々が出入りする窓(ロルンプヤル)が穿たれる。上座から入口方向を見て左側がハリキソ、右側がシソと呼ばれる座である。男性の客は上座に座り、主人夫婦がシソ(男性が上座側)、その他の家族がハリキソ(同様に男性が上座側)に座る。シソの後ろが主人夫婦の就寝空間となる。いろりには火の女神にへ捧げられるイナウがいろりのシソ・上座側にまつられる。神の出入り口(ロルンプヤル)は集落毎に異なっており、神が存在すると考えられる方向に向けられる。この神の出入り口をカミテ、入口側をシモテとするカミ-シモの空間軸、シソ、ハリキソの着座の上/下を示すヒダリ-ミギの空間軸が存在する。 沖縄の伝統的住居は、東西方向に並ぶ二列型であるが、前列は東側からカミ・ジャー(上座/一番座とも呼ばれる)、シム・ジャー(下座/二番座とも呼ばれる)、トゥン・グワ(飛び出した小室の意/台所である、最近まで土間であった)の順に並ぶ。シムジャーには先祖がまつられる。後列はウチ・バラ(下の庫の意)と呼ばれる狭い室である。この住居にはカミ・ジャー-トゥン・グワ方向にカミ-シモの空間軸が存在し、後列-前列方向にオク-マエの空間軸が存在する。これらの空間軸に従い、各室での生活行為、着座位置などが決定される。 次年度は、その他の日本を代表する伝統的住居について調査しその空間構造を明らかにした上で、それらの共通点を明らかにする。
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