本年度は、高齢者の長期滞在施設として、療養型病床群と特別養護老人ホームを取り上げ、調査・研究を行った。特に療養型病床群は比較的新しいタイプの病棟であり、建築的に研究が未だほとんど行われていないため、入院患者の属性・生活様態および看護・介護スタッフの作業内容などを明らかにすることによって、建築計画上の指針を導くことを目的としている。 具体的には、療養型病床群では、新築型・移行型の4病院を選定し、医師、看護・介護スタッフへのインタビュー調査を行い、療養型病床群の現況把握を行った。さらにこの中の1病院では、年齢・性別・入院日数・痴呆度・病状などの基本属性、生活能力、医療依存度などを含んだ入院患者の属性把握、看護・介護スタッフの作業行為、病室内での入院患者の生活様態について詳細な調査を行った。 特別養護老人ホームでは、都市型の施設を選定し、療養型病床群の調査と同様に入所高齢者の属性把握を行うとともに、施設の生活プログラムを把握した上で、居室・共用空間を含め施設全体を対象として、入所高齢者の生活様態、について調査を行った。さらに、介護スタッフの追跡調査を行うことで、生活単位と作業行為の関係を検討した。 調査の結果、痴呆度・自立度・要介護度などの違いから、入院患者・入所高齢者の行動内容や範囲に差異がみられることがわたった。これは、看護単位や生活単位の規模や空間構成に影響を与えるものである。
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