本研究では、福岡県北九州市で過去10年間に発行された「観光パンフレット」や「絵はがき」(以下、観光情報媒体)で、地元行政をはじめ、観光協会、その他関係機関に保存されているもの収集し、分析対象とした。収集した観光情報媒体から、祭りを被写体とした写真を抽出し、祭り毎に掲載枚数、掲載面積を調査した。同時に被写体となっている祭りの見物客数、重要文化財指定状況についても調査を行い、祭りの特徴と画像情報としての特徴の関係について分析を行い、観光画像情報として扱われやすいものを抽出した。次に、観光画像情報として取り扱われやすい祭り写真を対象として、祭りが撮影されている領域の面積、その背景に撮影されている要素ごとの領域の面積を計測し、その構成について考察を行った。 以上の分析により、次のことがわかった。 (1)祭りが開催される空間や、伝統的行事か市民行事かなどの性格により、観光画像情報としての提供のされ方に違いがあることが確認された。 (2)観光画像情報の提供される量は、集客性と文化的価値に関係していることが確認された。 (3)市街地の風景が前景・背景とする場合が少ないことから、観光情報媒体の製作者又は情報提供者は、市街地の風景は祭りの前景・背景としてふさわしくないと判断していることが推測された。逆に、観光対象であるものは、情報提供上の相乗効果を狙って、前景・背景に配置されることが多い。また、祭りの開催空間の景観整備が観光対象としての祭りの魅力向上に寄与する可能性を示した。 さらに、祭りが開催される空間である名所といわれる神社の立地特性についても調査を行い、その特徴について考察を行った。
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