研究概要 |
1.現地調査 エジプトアラブ共和国に赴き,遺構観察や文献などの資料収集を行った.カイロ・エジプト博物館では遺物の撮影をまたルクソールでは類例遺構としてのセティI世葬祭殿を始めとし,東、西両岸の神殿遺構の観察・撮影ならびに若干の採寸を行った. 2.論考 セティI世葬祭殿,ならびにアマルナの小神殿についてアメン神殿と同様に,遺構の矩形部分の対角線とそれを半径とする円弧と各部の関係を調べた.2つの遺構ともども、アメン神殿のように大きな単位でのスペースの分節を担っているような壁体がその円弧上に載っているとは必ずしも言い難い.強いていえばセティI世葬祭殿の場合,至聖所の入口が設けられている壁体前面が前庭部分の対角線の1/2を半径とする円弧に至近のものであった.しかしながらそのように計画されたと見るにはやや部分的な合致であると考えている.むしろ葬祭殿本体全面に位置する列柱の中心を境にして,前庭部分と本体部分の奥行き寸法がほぼ同じであることの方が全体的な規模の決定という意味では留意すべきであると思われた.他方アマルナの小神殿については中央矩形部の外隅の対角線を半径とする円弧が神殿最奥部の壁体の内法にほぼ合致するかに見受けられる.しかしながらアメン神殿の平面解析と同じように,そとには内法,外法の混用が生じている.ほぼ壁1枚分(2キュービット内外)の寸法差を誤差と判断するかどうかであるが,今回め論考では残念ながら結論には至らなかった. 2例の対角線を用いる計画の手順にそれぞれ最も適合する壁体が,方や対角線の1/2を,もう一方は対角線そのものを用いて得られたということから,対角線の取り扱いは一定ではないことを意味しているように思われる.その意味で神殿の計画における完数の適用を今以上に考慮して行きたいと思う.
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