カイネティック・モンテカルロ(KMC)法は薄膜結晶成長を実時間スケールで現的にシミュレー卜する手法として広く用いられている。しかし従来の一般的なKMC法では薄膜原子が占める位置は格子点に限られるため、成長に伴う薄膜の構造変化までは取り入れることができなかった。研究代表者が開発した分子動力学(MD)支援KMC法は局所的な非平衡な構造緩和をMD法で扱い、熱活性な拡散をKMC法で扱うことによって構造変化を伴う薄膜成長をより現実的にシミュレートする方法である。本研究は、MD支援KMC法をヘテロエピタキシーにおける重要な古典的問題および最近の問題に適用し、その有効性を実証すると共に、実験的に知見を得ることが難しい成長中の構造変化やパターン形成の動的メカニズムについて明らかにすることを目的としている。 本年度はbcc(110)上のfcc金属の成長を主にAg/Mo(110)を例として取り上げて研究した。Ag薄膜は実験的に報告されているKurdjumov-Sachs方位関係を主に持つドメイン構造をとっていること、Stranski-Krastanov成長様式をとることなどがシミュレーションで示された(発表論文)。現在Cu/Mo(110)についても研究中である。 またSiとGeの(100)-2x1再配列表面上のホモエピタキシーおよびヘテロエピタキシーについて、表面孤立原子の表面拡散の活性化エネルギーを多体ポテンシャルであるModified Embedded Atom Methodを用いて計算した。特にGe/Siは量子ドットを自己組織的に形成する系として重要である。この成果はThin Solid Filmsに投稿した。
|