研究概要 |
希土類金属-遷移金属Laves相化合物はその多くが強磁性またはフェリ磁性を示す。室温でC15型構造を持つTbCo_2は転移温度240Kでフェリ磁性へ磁気相転移する。この相転移に伴い,結晶格子が磁化容易方向([111]方向)にわずかに伸び,空間群はFd3mからR3mに変化する。平成12年度はTbCo_2の室温および低温での放射光粉末回折データを収集し,電子密度分布解析を行った。 化合物試料は,始めにアーク溶解によりインゴットを作製し,それを石英ガラス管に真空封入して1173Kで7日間熱処理を行った。次にインゴットをめのう乳鉢で粉砕し,沈降法により粒径が数ミクロン程度の粒子を選り分け,回折実験用試料とした。 粉末回折データはSPring-8 BL02B2においてイメージングプレートを検出器としたデバイシェラー法により測定した。電子密度分布はマキシマムエントロピー法(MEM)/Rietveld解析により得た。 予備的な解析結果であるが,得られた電子密度分布から,C15型室温相では最隣接Co原子間に混成軌道により生じたと考えられる共有結合が存在することがわかった。そして,このCo-Co結合は4面体カゴメネットワークを形成していることがわかった。この結合形態の特徴は基本的にはMgCu_2と同様なものであり,C15型Laves相に共通の特徴ではないかと考えられる。 低温相において,Co-Co結合の4面体ネットワークに大きな変化は見られなかったが,詳細に電子密度分布を調べると,磁化容易方向に垂直なカゴメネット面内のCo-Co結合に比べて,面外の結合の方がわずかに弱くなっていることがわかった。 磁化容易方向の格子の伸びはわずか0.5%足らずであるが,放射光とMEMを組み合わせた電子密度解析により微小な結合形態の変化を明らかにすることができた。
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