研究概要 |
本研究の目的は、"パルスMOCVD法"を用いた時の薄膜の析出機構について研究し、通常の"連続供給法"と比較して、成膜プロセスおよび特性について大幅な改善が可能になった機構を明らかにすることである。具体的には原料の供給パルス条件を変化させて作製した薄膜について、得られた薄膜の特性と微構造の関係を明らかにすることで、この方法の特性改善に優位な理由を解明することをめざした。その結果これまでに得られた結果は以下のようである。 1)パルスMOCVD法では415℃の低温でも鉛原料供給量を増加させても薄膜中の鉛含有量が変化しない"プロセスウインド"が存在し、その時のPb/(Pb+Zr+Ti)が0.5でありPb(Zr,Ti)O_3単相であることから、過剰のPb成分は再蒸発していることが確認された 2)基板温度を低下させた場合、連続供給法では465℃までしかPb(Zr,Ti)O_3相のピークが確認されないのに対し、パルスMOCVD法では395℃までの低温化が達成された。このことから、吸着種の基板表面でのマイグレーションがパルス法により促進されていることが明らかになった. 3)成膜温度を変化させて成膜した結果、すべての温度において通常の原料供給法よりパルス供給法で成膜した薄膜の方が表面は平坦となった。このことも、吸着種の基板表面でのマイグレーションの促進を示唆する結果である。 4)リーク特性の膜厚依存を調べた結果、リークが膜厚の減少と共に小さくなるのは確認され、これは原料供給法に依存しなかった。しかしすべての膜厚においてパルス法の法がリークは少なく、微構造良好な薄膜が得られていることが確認された。このことは緻密な微構造の薄膜が形成されていることを意味している。
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