マグネシアは優秀な絶縁特性と熱的特性(絶縁耐圧はアルミナの10倍以上、熱膨張係数はシリカの3分の1以下)を有するが、化学的不安定性のために、時間の経過と共に表面の絶縁特性が劣化する。そこで、走査型電子顕微鏡によるマグネシア局所表面の絶縁特性評価法の確立と、各種物質の吸着・吸収が絶縁特性に与える影響について調査した。 走査型電子顕微鏡を用いて、マグネシア多結晶体表面への電子ビームの照射と微細構造の観察を同時に行った。電子ビーム照射開始から数分が経過すると、試料表面にトリーイング(絶縁破壊が樹枝状に成長する現象)が発生することが分かった。また、トリーイングは結晶粒子表面よりも粒界から発生し易いことが分かった。電子ビームの照射によって蓄積される電荷から、試料表面の電界の分布を計算した結果、トリーイングは電界が高い場所から発生することが分かった。 室温、空気中でエージングした試料について、上述と同様の実験を行った。空気中でのエージング時間が長い程、トリーイングが発生するまでの電子ビーム照射時間が短くなることが分かった。電子ビーム照射時間が短いほど試料表面に生じる電界が低いことから、エージングにより表面の絶縁耐圧が減少する事が分かった。X線光電子分光法による測定の結果、エージングにより試料表面の炭素量が増加することが確認された。また、束縛エネルギーのシフト(化学シフト)が確認されたことから、マグネシア、水、二酸化炭素が化学反応を起こし、表面の組成が変化していることが示唆された。
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