マグネシアは優秀な絶縁特性と熱的特性(絶縁耐圧はアルミナの10倍以上、熱膨張係数はシリカの3分の1以下)を有するが、時間の経過と共に表面の絶縁特性が劣化する。これまで、電子顕微鏡を利用して、マグネシア表面への電子ビームの照射と微細構造の観察を同時に行い、局所表面に発生するトリーイング現象(絶縁破壊が樹枝状に成長する現象)を観察した。その結果、トリーイング現象が起こるまでの時間から、マグネシアの絶縁特性を評価できることがわかつた。これを踏まえて、平成13年度は、マグネシアの絶縁特性の改善を目的として、各種材料の添加効果を検討した。 マグネシアへ0(8160)1615wt%のカルシアまたはシリカを添加し、空気中1650℃で5(8160)167.5時間焼成することにより試料を得た。走査型電子顕微鏡を用いて、電子ビーム照射開始からトリーイング現象が発生するまでの時間を測定し、絶縁特性を評価した。また、空気中で5(8160)1620日間エージングした試料についても同様の評価を行った。 カルシアの添加効果を検討した結果、無添加のものに比べ、カルシアを10wt%添加した試料では、トリーイング発生までの時間が、約1.4倍になることがわかった。また、無添加のものに比べ、この試料では、エージングによる特性の変化が少ないことがわかった。 シリカの添加効果を検討した結果、シリカを6wt%添加した試料で、絶縁特性の改善が最大となった。無添加のものに比べ、トリーイング発生までの時間は約5.6倍であった。また、時間経過に伴う特性の劣化も極めて小さいことがわかった。 以上のことから、マグネシアヘのシリカの添加は、高性能・高信頼性を有する絶縁材料の開発に有効であることが示唆された。
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