研究概要 |
光ファイバに紫外光を照射することにより生成する色中心は、光ファイバのコア部に含有するGeに関連した構造欠陥に起因する事が分かっている.しかし,その欠陥の構造あるいは生成過程はほとんど解明されていない.光ファイバ中の色中心の生成は,ファイバのフォトリフラクティブ効果との関連が指摘されており,その生成・消滅機構あるいは原子スケールでの構造解明は,光ファイバグレーティングを高効率化する上では非常に重要である.欠陥の構造あるいは生成過程が完全に解明されていないことは,グレーティング書き込みに使用されるレーザ光では,他種類の欠陥が同時に生成され,それらを切り分けることが不可能であるためである.そこで本研究では,照射光の波長およびパルス幅を変化させることにより,選択的に特定の欠陥を生成する事により光誘起構造の解明およびその生成機構の解明を目的としている. 本年度は波長がほとんど同じであるがパルス幅の異なる二種類のレーザ光源を用い欠陥の生成を詳細に解明することにより以下の知見を得た.用いたレーザは波長355nm,パルス幅20psのNd:YAGレーザおよび波長351nm,パルス幅20nsのXeFエキシマレーザである.350nm近傍の波長ではGe^<2+>のみを選択的に励起することが可能である.また,パルス幅の異なるレーザを用いることにより反応中間体の確認が可能となる. Ge^<2+>を選択的に励起した場合,Ge関連電子中心とE'中心が生成するがこれらは一光子過程で発現しパルスのピーク強度や積算照射量に線形的に変化した.また,他種類ある電子中心のうち,一種のみが選択生成される事から,従来のモデルでは説明できないことを明らかにした.現在,新たな構造モデルを構築中である.
|