Ti-Al系軽量耐熱合金の主要な構成相であるTi_3Alの力学特性改善策として、逆位相領域境界(APDB)の導入に注目し、APDB分布の変化に伴う力学特性の変化について、化学量論組成のTi_3Al単結晶を用いて調べた。 APDB密度の変化に伴う、柱面すべり系と底面すべり系の臨界分解剪断応力(CRSS)の変化を調べた結果、いずれのCRSSもAPDB密度約40μm^<-1>において最大の値を示した。各すべり系のCRSSの最大値は350MPaと250MPaと、APDBが存在しない場合の、それぞれ約5倍と1.4倍もの高いであり、APDBの導入により一層高い降伏強度が得られることが示された。さらに、すべり系同士ののCRSSの差が軽減されたことから、APDB分布を制御することにより塑性異方性を軽減し、多結晶体の延性を改善できることが示唆された。 変形後の転位組織を観察した結果、APDB密度に依存して転位の運動様式は大きく異なり、その変化はCRSSの変化と対応して、柱面すべり系において特に顕著であった。APDB密度が高くCRSSが300MPa以上となる場合、超格子部分転位が単独で運動するのに対し、APDB密度が低くCRSSが300MPa以上となる場合、超格子部分転位が対を組んで、APDBを迂回して運動していた。このことから、APDBが超格子部分転位対としての転位のグループ運動を抑制することが、変形応力を高めていることが示された。また、10%以上の大きな塑性変形を与えた場合、APDBの面積が増大しないように、すべり変形が均一起こっていたことから、APDBの導入が均一変形の促進にもつながることが示唆された。 さらに、種々の焼鈍温度でのAPDB分布の時間変化を調べた結果、APDBの安定性は拡散係数のデータから予想されるよりも低いことが明らかとなり、その安定性の向上が今後の課題として浮かび上がった。
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