軽量耐熱材料として期待されるTi_3Alの力学特性改善策として、逆位相領域境界(APDB)の導入による転位運動の制御に着目し、一連の研究を行った。 平成12年度の研究では、化学量論組成のTi_3Al単結晶中に、サイズの異なる(10mm〜500mmの逆位相領域(APD)を導入し、その力学特性に及ぼす影響を調べた。その結果、Ti_3AIの変形応力並びに転位の運動形態はAPDサイズに強く依存し、しかもその依存性が、活動するすべり系によって全く異なることを見いだした。このことより、APDのサイズ、形態、そしてその安定性を制御することが、結晶塑性異方性を軽減し、Ti_3Al多結晶体の力学特性改善の鍵となることを明らかにした。 平成13年度は、この発見に基づき、APDBのサイズ、形態、安定性の制御の指針を得ることを目的として、APDの成長挙動に及ぼす組成の影響を調べた。特にAPDの成長速度はAI濃度に強く依存し、Ti-23at.%AlとTi-25at.%Alとでは、Al濃度がわずか2at.%異なるだけであるにも関わらず、Ti-23at. %Al中のAPDの成長速度はTi-25at.%Al中の30%も小さな値をとった。また、高Al濃度のTi-33at.%AlにおけるAPDの成長速度は、Ti-25at.%Al中よりも6倍も大きくなることが見い出された。さらに、Ti-33at.%Al中においてのみ(0001)面に沿ったファセット上のAPDBも観察された。 これらの結果より、AI濃度の選択と適正な熱処理によりAPDBを制御し力学特性を制御できることが明らかとなった。また同時に、このような強いAl濃度依存性は、拡散データからでは全く予想されないことであることから、APDの安定性および形態を制御する上で、APBエネルギーの評価が重要であることも示された。
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