研究概要 |
内部応力超塑性は,ある種の材料に熱サイクルを付加することにより,相変態や熱ひずみのミスマッチを生じさせ,誘起された内部応力を利用した超塑性である.本研究の目的は,これまで熱サイクル条件下でのみ報告されていた内部応力超塑性が,荷重サイクル条件下においても誘起されることを確認することである.本年度も昨年度に引き続き,Pb-Al_2O_3粒子分散複合材料に限定してその内部応力超塑性挙動を調べた. 純度99.9%の鉛粉末と平均粒子径5μmのアルミナ粉末をボールミルを用いて混合した後,ダイスに充填し,約900MPaで一軸プレスを行った.圧粉体中のアルミナ粒子の体積分率は31%である.圧粉体を室温にて押し出し比8.4で押し出し,円柱状圧縮試験片を得た.またAl-Si合金粉末をホットプレスし,500℃で焼鈍することにより,試験片を作製した.アルミニウムとシリコンも熱膨張率の違いが大きいため大きな内部応力が誘起される. Pb-Al_2O_3複合材料は100℃付近,Al-Si合金は400℃付近で等温,熱サイクルクリープ試験を行った.Al-Si合金の場合,熱サイクルクリープ速度は等温クリープ速度よりも大きくなり,典型的な内部応力超塑性を示した.しかしながらPb-Al_2O_3複合材料は鉛とアルミナの熱膨張率に大きな違いがあるにもかかわらず,内部応力超塑性特有の線形クリープが観察されなかった.この原因として同材料の充填率が95%程度と小さいことが挙げられる. 結果的に本研究では,材料作製の問題のために荷重サイクル型の内部応力超塑性を証明できなかった.しかしながら過去の文献では荷重サイクルにより複合材料の密度が向上したという研究例も存在するため,マトリックスと介在物の界面接合がよい材料系を選択することで,荷重サイクル型内部応力超塑性が誘起されると期待できる.
|