研究概要 |
GIG(nano-Granular In Gap)膜の磁気抵抗効果(MR)の磁界感度は,用いるナノグラニュラー膜のMR特性に大きく依存し,MR比の大きなナノグラニュラー膜を用いることによって,より大きな磁界感度を有するGIG膜が得られる.本年度は,大きなMR比を示すナノグラニュラー膜を得るために,種々の組成の金属-フッ化物系膜について,膜構造およびMR特性について検討した.試料は,Fe,CoまたはFeCo合金ターゲットとMgF_2ターゲットを同時にスパッタする,2元同時スパッタ法によって作製し,基板にはコーニング#7059ガラスを用いた.得られた試料のMR特性および電気比抵抗は,直流4端子法を用いて評価し,磁気特性は,振動試料型磁力計によって測定した.得られた試料の組織構造は,X-ray回折装置によって調べた.GIG膜の作製は,フォトリソグラフィの手法を用いて行い,描画結果は高倍率の金属顕微鏡によって観察した. その結果,32vol.%(Fe_<0.51>Co_<0.49>)-(Mg-F)膜が,室温800kA/mにおいて13.3%の大きなMR比を示すことがわかった.この値は,これまでに報告されている金属-非金属ナノグラニュラー膜における最大値である.このMRの増大は,膜中の金属グラニュールの分極率の増加によるものと考えられる.さらに,この膜を用いたGIG膜を作製し,弱磁界でのMR特性を評価した.その結果,Fe_<66>Ni_<34>(1.5μm)膜と32vol.%(Fe_<0.51>Co_<0.49>)-(Mg-F)(0.5μm)膜からなるGIG膜は,0.08〜0.16A/mの弱磁界で4%以上のMR比を示し,弱磁界で大きな磁界感度を有する.この値は,以前に報告したグラニュラー膜にCo_<39>Y_<14>O_<47>膜を用いた場合よりも,約1.7倍大きい値である.
|