水素吸蔵合金の水素化挙動を動的・反応速度論的に明確にすることを目的とした研究を実施した。特に(1)合金種による違いに着目し、水素化の形成過程を動的に把握する、(2)平衡水素圧の高い合金については、耐圧用観察チャンバーを開発・検討する、(3)イオン注入・イオンミキシングの効果を反応速度論的に明確化する、といった点に重点を置いた。 初年度は、従来より使用している低圧用観察チャンバーを用いた研究を中心に行った。また、耐圧用観察チャンバーの開発をメーカーと共同で行い、製作した。 平行水素圧の低いZrCoおよびZrNiの水素化物形成過程をHSM(高温顕微鏡)で明らかにすると共に、イオン注入およびイオンミキシングによる優位さを計測・算定した。また、昨年、作製した耐圧用観察チャンバーをもちいて、TiFeのHSM観察を実施したが、データを公表するほどのクリアな画像が取り込めなかった。しかしながら、違う合金(たとえばV系合金)を選択すれば可能であると推定されるため、引き続き研究を進める予定である。 HSMで観察を実施した試料に対し、表面分析を試みた。主に、RBS、AESを使った分析を行い、HSMで捉えた現象の解析・考察を行った。この結果により、合金種による水素化挙動の相違、イオン注入・イオンミキシング効果の原因を明確にした。
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