はじめに、希薄溶液中における電位勾配を振動電極法により測定した。この測定結果を、従来より開発してきた泳動と拡散を考慮したNernst-Planckの式を用いた希薄溶液の輸送現象解析プログラムの計算結果と比較した。その結果、実測値がわずかに大きな値となることがわかった。この原因として、溶液内のpH変化にあるとして、新たにNernstの電極電位を考慮した数値解析プログラムを開発し、計算結果を実測値と比較した。全ての実測値は、上記の従来手法による計算結果と、新たにNernstの電極電位を考慮した計算結果の間に収まっており、精度の高いモデル化が行なわれていることを確認した。 次に、溶液内のイオン間の相互作用をモデルに組み込み、より濃度が高い溶液に対応する数値解析プログラムを開発した。このプログラムによる計算結果より、濃厚溶液においては、一定電流を印加した場合に電位勾配が時間と共に大きくなることが予測された。そこで、振動電極法により計測を試みているが、現在までに予測された電位勾配上昇は観測されていない。そこで、モデルの妥当性や測定系の性能に関して再度検討する必要があると考えられる。 現在、限界電流の測定等、異なる手法による予備的な実験を行い、種々の可能性について検討中である。
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