低炭素鋼S12C(Fe-0.12wt%C)のマルテンサイト組織を有する円柱試験片の、A1点以下での高温圧縮・急冷試験を行った。低温で圧縮を行った場合は加工硬化が生じるが、高温・低ひずみ速度ではフェライト鋼の動的再結晶発現時に見られるのと同様の緩やかな応力低下が観察された。組織観察の結果、粒径数μmの微細結晶粒組織が形成されており、SEM/EBSP測定によってこれらが大きな方位差を持つ多結晶体であることが明らかとなった。微細粒組織の発現は、Zener-Hollomon因子が10^<13>S^<-1>の場合に起こり、また微細粒の粒径もZの関数として整理された。すなわち、マルテンサイトを出発組織として動的再結晶が生じることが明らかとなった。フェライト組織を出発組織とした場合には微細動的再結晶組織は生じなかったことから、出発組織をマルテンサイト組織とすることが結晶粒微細化にとって有効であることが示唆された。
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