研究概要 |
平成12年度の研究においては,単結晶試験片における変形組織,焼鈍後の再結晶組織の解析手法として,電子背面散乱回折法(EBSD)を適用するため,基礎的な実験技術の確立を行った。まず,研究代表者の所属する研究グループにおいて,最も実験データの蓄積のある純アルミニウム引張試験片および,その試験片を再結晶させたものを,EBSD法により調査し,従来から用いている電子チャネリングパターン(ECP)法で得られたデータとの比較を行った。 30%の引張ひずみを与えた<011>{110}試験片においては,特殊な変形帯(SBSS)内に形成された再結晶粒の形状と方位に,興味深い関係が見出された。再結晶粒は,変形時に活動した主すべり面もしくは準主すべり面のトレースに沿って引き延ばされた様な形態を示し,主すべりに沿って伸びた再結晶粒とSBSS方位は,(主すべりではなく)準主すべり面の法線を共有してた。 70%の引張ひずみを与えた試験片においては,変形時にひずみの蓄積が比較的少ない二次すべり帯が核となって,焼鈍時にひずみ誘起粒界移動が起こる様子が明瞭に見出された。 以上の知見は,従来のECP法では見いだせなかった項目であり,変形組織と再結晶の基本的な関係を示すものとして注目している。現在,30%引張試験片のデータは"Materials Transactions"誌に論文として投稿中である。
|