多結晶シリコン薄膜などの安価な半導体材料に金属超微粒子を無電解析出させることで、高効率かつ低コストな太陽電池を作製することを目的に研究を行っている。今年度は、シリコン半導体上に白金微粒子をその大きさや分布を制御してつけることのできる白金無電解析出浴の開発を試みた。 1mmol dm^<-3>の塩化白金酸水溶液に15mmol dm^<-3>のフッ化水素酸を添加しただけの単純な無電解析出浴(浴温313K)に単結晶n型シリコンウェーハを120秒間浸すと、大きさ80〜300nmの白金微粒子が数密度約7x10^7個cm^<-2>で置換析出した。この電極を白金対極とともに臭化水素酸と臭素からなるレドックス水溶液に浸して湿式太陽電池としたところ、開回路光電圧0.53Vが発生し、光電変換効率9%が得られた。さらに高い変換効率を再現性よく得るために、浴組成や浴温、浸漬時間などの様々な実験条件について検討した。塩化白金酸濃度の増大とともに、白金微粒子の数密度が増大するなどの一定の傾向は見られたものの、それらは実験ごとに大きくばらつき、太陽電池特性の再現性も低かった。 そこで、あらかじめシリコン電極に塩化白金酸水溶液中で電位パルスを印加して白金の核をつけたものを無電解析出浴に浸したところ、析出した白金微粒子の数が電析核の数と同程度の2x10^<10>個cm^<-2>に増大するとともに、太陽電池特性の再現性が向上した。このことから、初期析出核の発生過程を制御することが、白金微粒子をよく制御して太陽電池特性を向上させるために重要であることが分かった。今後は、パルス電析以外の簡便な核づけ方法を探索する予定である。
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