多結晶シリコン薄膜などの安価な半導体材料に金属超微粒子を無電解析出させることで、高効率かつ低コストな太陽電池を作製することを目的に研究を行った。シリコン半導体上に白金微粒子をその大きさや分布を制御してつけることのできる白金無電解析出浴を開発し、高効率な湿式太陽電池の作製を試みた。昨年度、フッ化水素酸を含む塩化白金酸水溶液に単結晶n型シリコンウェーハを浸すだけで、大きさが80〜300nmの白金微粒子が約10^8個cm^<-2>2で置換析出することを明らかにし、約9%の光電変換効率を持つ湿式太陽電池の作製に成功した。しかし、析出する白金微粒子数密度のばらつきが大きく、制御性が低かった。あらかじめシリコン電極に塩化白金酸水溶液中で電位パルスを印加して白金の核をつけたものを無電解析出浴に浸したところ、粒子数密度および太陽電池特性の再現性がともに向上した。 今年度は、初期析出核の発生を制御して無電解白金析出プロセスの制御性向上を試みた。硝酸酸化によって表面に酸化物膜を形成させたシリコンウェーハを用いて白金の無電解析出を行うと、白金粒子数密度は2〜3x10^7個cm^<-2>と大きく減少したが、そのばらつきは比較的小さくなった。また、無電解析出溶液の組成や温度、あるいはウェーハの浸漬時間を変えることがで粒子の大きさを数十から数百nmの範囲で、数密度を10^7〜10^8個cm^<-2>の範囲で制御して白金微粒子をつけることができた。この時も、適当な条件の範囲内では、ばらつきの小さな再現性の良い結果が得られた。さらに、塩化白金酸を含まない電解質溶液中でシリコン電極に電位パルスを印加したのちに白金の無電解析出を行うと、パルスを印加しなかったものよりも高い数密度で白金粒子が析出することを見いだした。以上の結果は、シリコン表面の結晶欠陥などの準位が白金析出核の生成に関与していることを示している。
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