急冷凝固法などにより作成された共晶組織、過飽和固溶体などの準安定組織を初期組織とし、高周波加熱・レーザー加熱を用いて、急速加熱により起こる大過冷却凝固・微細組織形成の物理現象を理解し、急速加熱・凝固という新しいプロセスによる組織制御・機能発現などの可能性を明らかにすることを目的として研究を行った。 通常の熱伝導・輻射による急冷加熱では試料表面から内部に向かって熱伝導により冷却されるため、バルクの急加熱はできなかった。そこで、高周波誘導加熱により表皮厚さの部分を直接加熱する手法を開発した。 また、Al_2O_3-YAG系において、準安定Al_2O_3-YAP共晶組織を加熱して、過冷却液体が得られる条件を実験面から明らかにした。さらに、擬3元系においても、準安定共晶組織の選択条件、加熱準安定共晶組織の再加熱による過冷却液体の形成能、さらに過冷却液体からの凝固組織について系統的に調べた。 Al_2O_3-YAP系の共晶凝固組織を急加熱・保持により凝固させた試料では、μmオーダーの非常に微細な共晶組織が形成され、加圧により粒子同士を容易に結合させることもできることが明らかになった。この結果により、準安定組織の急速加熱・過冷却液体の製造から溶融加工ができる可能性が明らかになった。
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