研究概要 |
瀝青炭,亜瀝青炭,褐炭を石炭試料とした.申請者らが確立した重水蒸気の吸着脱着法により石炭試料中の水酸基水素を選択的に重水素化した試料も調製した.膨潤溶剤として無極性溶媒(ベンゼン)と極性溶媒(ピリジン,DMSO)の混合溶媒を用いた.溶剤の組成を変化させることにより溶媒の物性を制御でき,膨潤度Qの異なる一連の膨潤試料が調製できた.膨潤試料の^1H-NMRスピン-スピン緩和特性を,303Kでソリッドエコー法により観測し,膨潤により動きやすくなった水素(易動性水素)量C_<MH>を評価した.重水素化処理試料のC_<MH>と無処理のC_<MH>との差から易動性水酸基水素量C_<M(OH)>を決定し,Qとの関係を実験的に明らかにした. Flory-Hugginsの式に水素結合の寄与項を新たに加えることにより,石炭と溶媒の混合自由エネルギー変化に及ぼす水素結合の影響を記述できる.水素結合の寄与項を膨潤炭中の石炭体積分率(Φ_c=1/Q)の連続関数として表すために会合平衡理論を適用することを試みた.水素結合の寄与項に必要なパラメーターは,石炭-溶媒間および石炭分子間の水素結合性相互作用の平衡定数(K_AおよびK_B)である.K_Aは従来の研究にしたがい,フェノール-溶媒系のIR測定より水酸基の伸縮振動の波数シフトに基づいて求めた平衡定数および石炭のフェノール性水酸基1mol当たりの分子容に基づいて決定でき,多くの溶媒についての文献値がある.K_Bは,C_<M(OH)>とΦ_cの関係に会合衡理論を適用して数値シミュレーションにより決定した.その結果,褐炭のK_Bが30であること,会合平衡理論により実験結果は矛盾なく説明されることを明らかにした.
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