複合異常原因を対象とした符号付有向グラフを用いた異常診断システムにおいては、一般に異常原因の候補が多数出力される場合が多く、診断精度が高いとは言えない。そのため、実用的なレベルでの診断精度の事前評価を行うためには、診断精度を向上させる必要がある。 本年度は、符号付有向グラフを用いた異常診断システムの診断精度を向上させるために、状態変数間の異常の伝搬時間を利用し、複合異常原因に対応したアルゴリズムを用いた診断法を開発した。 この診断アルゴリズムの効果を確認するために、パソコン上でVisual C++コンパイラを用いてFCC(流動接触分解プロセス)のシミュレータを開発し、突発的な故障やミスオペレーションなどの複数の異常を考慮した異常診断実験を行い、異常の伝搬時間の利用が複合異常原因を対象とした場合においても診断精度を向上させることに有効であることを示した。 今後診断精度の事前評価を行うための異常診断アルゴリズムとしては、診断精度が高くまた高速な診断法が求められるが、本年度開発した異常伝搬時間を利用した診断法を元にしてさらに異常検知のしきい値を定量的な解析から決定した診断法と融合させた診断法が有効であると思われる。
|