本年度実施の研究概要 安定な精製空気供給ラインおよび反応器を含めた実験系の構築を行った。その際、低蒸気圧な有機ガス状物質を安定に発生できる恒温式拡散ガス発生装置を試作し、数十ppbから数ppmレベルでの安定な有機ガス発生を得た。実験は、円筒型流通式反応器に濃度、湿度および流速を調整した有機ガス(ここではトルエンを選択)を導入し、オゾン生成能を有する短波長紫外光(254nm+185nm)を照射した後、有機ガス除去率および二次粒子の生成(ガス-粒子転換)傾向を調査した。また、同波長のUV光照射下で光触媒/複合酸化物触媒存在下の実験も同様に行った。 得られた成果 濃度ca.600ppb、流速1L/min、相対湿度ca.40%の条件において、ほぼ100%に近いトルエン除去率を得た。各条件をそれぞれ変化させた際、より低湿度な条件下においてトルエン除去率の低下と生成粒子の減少が観測された。これは光化学反応に寄与しうるOHラジカルが不足するためと考えられる。また、より高流速な条件、高濃度な条件下では、除去率の低下および生成粒子の増大が見られ、未分解トルエンの粒子成長への寄与が示唆された。これら各条件に対し、光触媒/複合酸化物触媒の添加により除去率の向上ならびに粒子生成の抑制効果が見られた。これは、光化学反応に光触媒分解反応が加味されたものと考えられた。実際、触媒混合条件下でCO_2までの完全酸化割合が向上する結果を得た。また、生成粒子をガス成分とともに全捕集分析した結果、検出されたピークは、シュウ酸をはじめとするジカルボン酸類がほとんどであり、これらが生成粒子の主成分であると考えられた。これより難水溶性有機ガスは、酸化分解もしくは水溶性粒子にガス-粒子転換されたものと言える。 今後の展開 吸着/熱脱離式吸着剤塗布デニューダの開発(有機ガス用)と既設の酸・塩基デニューダ(酸・塩基性ガス用)を用い、ガス/粒子分別を行い正確な粒子組成分析を試みる。その上で、本法の利用可能性、得られる清浄度について総合的に判断する。また、開発する吸着剤塗布デニューダの一般大気捕集への応用についても検討したい。
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