研究概要 |
本研究では、単純共晶系であるナフタレンおよびp-クロロニトロベンゼン(p-CNB)を分離モデル物質として取り上げ、超臨界流体を用いた高度分離に関する検討を行う。超臨界流体としては、臨界温度が室温に近く、無毒,安価であるといった理由より最も一般的に利用される二酸化炭素を用いた。超臨界晶析を利用した分離プロセスを考える場合、超臨界二酸化炭素に対するナフタレンおよびp-CNBの2成分系(超臨界二酸化炭素+ナフタレン系および超臨界二酸化炭素+p-CNB系)および3成分系(超臨界二酸化炭素+ナフタレン+p-CNB系)の相平衡関係が基礎的知見として必要となる。そこで、まず超臨界流体系の相平衡関係が測定可能な半回分式流通法に基づく測定装置を新たに設計・製作した。本装置は3成分系における混合物中の溶質の濃度(比率)を種々に変化させることが可能である。次に、超臨界二酸化炭素に対するナフタレンおよびp-CNBの溶解度を、温度308.2および318.2K、圧力8〜20MPaの範囲で測定した。さらに、温度308.2Kおよび圧力20MPaにおいて超臨界二酸化炭素+ナフタレン+p-CNB系の3成分系等温相平衡関係を測定した。得られた溶解度は、それぞれの溶質の超臨界二酸化炭素に対する溶解度と3成分系の共晶点を結ぶ直線(単純共晶系)となることがわかった。これは液体溶媒に対する溶解度と同様であり、これより超臨界流体を溶媒として用いた場合も液体溶媒を用いた通常の晶析技術と同様な分離手法が適用可能であることが示された。次に、溶解度測定装置の下流部分に可視窓付セルを新たに設置し、超臨界二酸化炭素中のナフタレンの結晶成長を温度310.2K、圧力20MPaにおいて測定した。その結果、ナフタレンの結晶成長速度は過飽和度に対して比例関係を示し、その値は有機溶媒中の結晶成長速度とほぼ同等であることがわかった。
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