プロピレンオキシドは化学工業に欠かせない重要な化学物質の一つであり、プロピレンを分子状酸素でエポキシ化する新たな触媒の開発が望まれているが未だ成功していない。一方、光エネルギーを利用することにより、アモルファスシリカ上でプロピレンが酸素分子によりエポキシ化されること、シリカに微量の添加金属を加えることによりその活性が向上することが見いだされた。本研究では、触媒として利用可能な元素のすべてにわたってスクリーニングを行い、有望な触媒についてその構造因子、触媒反応機構などを明らかにすることを目的とした。スクリーニングの結果、Ti及びZnを添加した場合に特に成績がよかったため、それぞれの触媒活性種の構造と光触媒活性との相関を詳しく検討した。様々な濃度のTiをシリカに担持あるいはゾルゲル法により添加し、光エポキシ化活性を検討した結果、Ti濃度が低いほどエポキシ化選択率は向上した。キャラクタリゼーションの結果、シリカマトリクスに囲まれた孤立高分散チタニア種がエポキシ化活性に寄与し、逆に凝集種は他の生成物の生成を促進することが明らかとなった。触媒調製法としてはゾルゲル法を採用した方が、この孤立種を効率よく発現させられることが見いだされた。またこの種が光照射下で酸素分子をラジカル化し、この酸素ラジカルがプロピレンをエポキシ化する反応機構を示唆するスペクトルも得た。一方、シリカ担持Zn触媒でも、シリカ上の高分散なZn種がエポキシ化活性が高く、Ti触媒と同様の考察ができた。これらを考慮すると、シリカ中に高分散されることが、エポキシ化光触媒にとって最も重要な要素であることが示唆された。
|