研究概要 |
アルギン酸をニチニチ草細胞に作用させると、5′-Phosphodiesterase(5′-P Dase)などの抗菌酵素やアルカロイドの生産が促進された。アルギン酸とエリシター活性を有する種々の天然多糖類と比較検討した結果、アルギン酸はガラクチュロン酸と高い類似生を示し、内在性のエリシター様物質であることが明らかとなった。アルギン酸にはポリマーとオリゴマーがあり、約数百〜200万と広い分子量分布を有しており、アルギン酸をオートクレーブ滅菌するとポリマーが分解し、オリゴマーの量が増大すると伴にアルギン酸以外の加熱分解(分子量100以下)が新たに生成することが明かとなった。アルギン酸のオリゴマー(分子量1,000〜4,000)はポリマー(分子量4,000以上)に比べて高いエリシター活性を示した。また、ウロン酸であるアルギン酸に特有のカルボキシル基の電荷が、エリシター活性の発現に重要な役割を果たしていることを明かにした。蛍光標識したアルギン酸を作製し検討した結果、アルギン酸が植物細胞の細胞膜だけでなく原形質にまで到達していることが明かとなった。オートクレーブ滅菌によりアルギン酸から生じる加熱分解物の効果を調べた結果、植物細胞の酵素生産を促進させる効果があることを明かにした。分析の結果、加熱分解物の中で特に、(trans)-4,5-dihydroxy-2 cyclopenten-1-one(DHCP)が強い活性を有することが明かとなった。さらに、DHCPはウロン酸系の糖から生成することを明かにし、その最適生成条件として、pH2,121℃,2hを設定した。以上の結果よりアルギン酸ポリマー、オリゴマーおよび加熱分解物いずれもが植物細胞の有用物質生産促進効果を有することが明かとなった。得られた知見を基に、アルギン酸オリゴマーおよび加熱分解物を適切な濃度で組み合せてニチニチ草細胞に作用させた結果、無添加に比べ60倍高い5′-P Dase生産性を示した。
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