昨年の研究報告により、ヒスチジン(H)、リジン(K)、アスパラギン酸(D)から構成されるその保存領域はHKDモチーフ(HxKxxxD)と呼ばれ、PLD酵素活性には必須であることが明らかとなっている。またそれぞれのHKDモチーフの下流にはグリシン・グリシン(GG)モチーフとグリシン・セリン(GS)モチーフが存在することも明らかとなっている。本年度はHKDモチーフとGG-GSモチーフに関して部位特異的アミノ酸置換を行い、触媒機能変換に関して解析を行う。最後にタンパク質立体構造予測ソフトを用い、野生型PLD酵素と変異導入PLD酵素の立体構造変化について予測を行い、触媒作用の変化と立体構造変化の相関関係について解析および考察を行う。 点変異導入による部位特異的アミノ酸導入の影響の解析から、触媒活性においてHKDモチーフ内のヒスチジン、リジン、アスパラギン酸残基は必須であることが明らかとなった。また、GG-GSモチーフに変異を導入したところ、いくつかの変異体に関してリン酸基転移反応活性が野生型と比較して10倍以上に向上した。これらの変異体については今後立体構造を実際に結晶解析を行って検討しなければならないが、現段階ではGG-GSモチーフに変異を導入することで何らかの触媒作用変化がおきたものと考えられる。さらに、486番目のチロシンに変異を導入したところ、HKDモチーフ同様活性が1/3以下に減少したことから、このチロシン残基もリン酸基転移反応活性に重要な影響を及ぼしているということがあきらかになった。また触媒活性が向上したGG-GSモチーフ変異体について、タンパク質立体構造予測ソフトを使用して立体構造を解析したところ、GG-GSモチーフに変異を導入することによりある特定の構造変化を示す1つのループ構造が確認された。このことから変異導入によるループ構造の変化が、触媒活性に影響を及ぼしているものだと考えられる。
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