有効なハイブリッド型人工肝臓の実現を目指した。ハイブリッド型人工肝臓では、肝細胞系の細胞が用いられており、人工肝臓が長期の利用に耐えられない原因の一つにアポトーシスという細胞死を想定した。一般的に、アポトーシスを抑制する蛋白としてBcl-2がよく知られている。そこで、bcl-2遺伝子をヒト肝癌細胞に導入することでアポトーシスを抑制し、肝機能の持続を目指した。 次のように実施した。肝ガン細胞株HepG2にBCMG-bcl-2をリポフエクチン法で導入した。細胞死耐性は、培地を交換しない回分培養で検討した。アルブミン産生は、培養上清をELISA法で定量した。アンモニアは、細胞の入った各ディッシュにNH3負荷培地を加えてNH3濃度の経日変化をアンモニアテストワコー(和光純薬)により測定した。 その結果、次の結果を得た。bcl-2遺伝子の発現は、Western blotting法により確認した。bcl-2の過剰発現によって細胞死への耐性は、SF-O2培地(三光純薬)を用いた19日間の回分培養では、未導入株の生存率7.0±1.4%に対してbcl-2導入株では73±1%と大幅に改善された。アルブミン産生は細胞死耐性ほどには改善せず、bcl-2導入によって30%程度の向上しか認められなかった。アンモニア代謝能力は、他の多くの肝癌系細胞株と同様に、未導入株・bcl-2導入株も双方とも、除去するよりもむしろ産生していた。 アンモニア代謝能については、株化した肝細胞株では失われていることが知られている。そこで、グルタミンシンテターゼ経路によるアンモニア代謝能を付与された肝細胞株(大阪大学、大政博士より入手)を対象に上記と同様の検討を開始した。
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