プロテアーゼはタンパク質を加水分解する酵素であるが、有機溶媒存在下では、ペプチドやエステルの合成反応を触媒することができる。しかしながら、一般に酵素は有機溶媒に不溶であり、しかも有機溶媒存在下では容易に変性、失活する。申請者らは、先に、有機溶媒に安定なプロテアーゼを産生する有機溶媒耐性微生物pseudomonas aeruginosaPST-01株の取得に成功している。本研究では、P.aeruginosa PST-01株が産生する有機溶媒に安定なプロテアーゼの有機溶媒安定性を分子生物学的手法により解明することを目的とする。 本年度は、まず、PST-01プロテアーゼの全塩基配列をシーケンスした。塩基配列から、PST-01プロテアーゼはP.aeruginosaが産生するエラスターゼの一つであるシュードライシンであることが明らかとなった。PST-01プロテアーゼの前駆体は、組換え大腸菌では細胞外に分泌されないが、溶菌により細胞外に遊離し、33.1kDaの成熟酵素になることを明らかにした。また、組換え大腸菌によって生産されるPST-01プロテアーゼの有機溶媒安定性等の性質はP.aeruginosa PST-01株によって分泌生産されるPST-01プロテアーゼの性質と一致することを確認した。また、PST-01プロテアーゼを用いて水-有機溶媒均相系でペプチド合成反応を行った。有機溶媒を含まない場合に比べて、60%(v/v)DMSO存在下のペプチド合成反応の初速度は約5.1倍速く、平衡収率は約7倍高いことが明らかとなった。
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