ポリヒドロキシ酪酸(PHB)は、自然界の微生物によって水と二酸化炭素とに分解されるため、環境に負荷のかけない生分解性高分子として注目されている。メタン資化細菌はメタンを唯一の炭素源、エネルギー源として生育する微生物である。一部のメタン資化細菌にはPHBを菌体内に蓄積することが知られている。しかしながら、高効率にPHBを蓄積する菌体および蓄積条件等に関して詳細は明らかにされていない。本研究では、PHB蓄積率の高いメタン資化細菌を自然界より見つけ出すことを目的に、その探索方法について検討おこなった。 メタン資化細菌Methylosinus trichosporium OB3bは菌体内にPHBを蓄積することが報告されている。本研究では、PHB蓄積能を有するメタン資化細菌としてM.trichosporium OB3bを用い、Nile red含有寒天培地を用いた検出方法について検討した。まず、Nile redがM.trichosporium OB3bの増殖に与える影響を検討した。その結果、M.trichosporium OB3bはNile redを含む寒天培地(0.5mg-Nile red/ml-medium)を用いた場合でもNile redを含まない培地と同様の増殖速度で増殖した。これにより、Nile redはM.trichosporium OB3bの増殖には影響を与えないことがわかった。この際、菌体内に蓄積したPHB(液胞)に特異的にNile redが取り込まれるために、PHB蓄積菌体がNile red含有寒天培地中で蛍光を発することが示唆された。以上の結果より、Nile redがPHB蓄積菌体の検出試薬として有効であることがわかった。 このNile red含有寒天培地を用いて探索をおこなった結果、窒素源と銅濃度を制限したときPHB蓄積能を有するメタン資化細菌が検出された。これより、Nile red含有寒天培地がPHB蓄積能を有するメタン資化細菌の探索に使用できることが示唆された。
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