研究概要 |
我々は近年カリックスアレーンの架橋CH_2を硫黄で置き換えたチアカリックスアレーンの簡易合成法を見出し,独自の新機能を見出している.本研究は水溶性チアカリックスアレーン(TCAS)の希土類金属錯体を生成させ,これを発光レセプターとして用い,超分子形成による水溶性有機分子のセンシングを目的としている.当年度はTCASと架橋硫黄酸化体(SO_2CAS),及び従来のカリックスアレーン(CAS)を比較に下記(i)(ii)を検討した. (i)TCAS類を用いるレセプターの創製 各配位子の4個のOH基の酸解離特性を調査した.第1〜4酸解離定数ともCAS>TCAS>>SO_2CASの順に減少し,架橋基がCH_2,S,SO_2となるに従い酸性度が増大することを明らかにした.TCASはpH8.5,SO_2CASはpH5.5,CASはpH12でTb^<III>イオンと定量的に錯形成した.連続変化法から各錯体の組成は[Tb^<III>(tcas)],[Tb^<III>(so_2cas)],[Tb^<III>(cas)_2]となった.いずれも強いエネルギー移動発光を示し,レセプターとして利用可能である. (ii)レセプターのエネルギー移動発光特性の評価 レセプターの発光量子収率は[Tb^<III>(tcas)]:0.15,[Tb^<III>(so_2cas)]:0.13,[Tb^<III>(cas)_2]:0.12であった.軽水中での発光寿命は各錯体ともほぼ等しかったが,重水中では特に[Tb^<III>(tcas)],[Tb^<III>(so_2cas)]の発光寿命が増加した.これよりTb^<III>錯体の配位水分子数を推算し,[Tb^<III>(tcas)]と[Tb^<III>(so_2cas)]は[Tb^<III>(cas)_2よりも多数の配位水分子を保有していることを明らかにした. 以上は来年度に「(iii)超分子錯体形成における発光挙動変化の評価」を検討する上で重要な成果である.
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