本研究では、液相中の微量物質を検出するための新しい汎用的な分光法を開発することを目的とする。本年度は研究実施計画に基づいて、液相中でキャビティリングダウン分光法を実現するための微細流路(マイクロチャネル)を利用したキャビティ(多重反射セル)の作製と測定システムの開発を行った。 1.セルの作製 マイクロチャネルの内壁をキャビティとして利用するために、加熱式真空蒸着器でガラス基板にクロムを蒸着し、液体の流路になる中板を蒸着した2枚を組み合わせてキャビティを作製した。光の反射率をできるだけ高くするために、ガラス表面のクロムの膜厚を最適化した。液体試料を導入しないでセルにレーザー光を透過させて、セルの性能を評価したところ、多重反射の間に光を欠損することがわかった。これはクロムを蒸着するガラス表面の面精度とクロム膜の均質度などによる光の散乱が透過率に大きく影響することが原因である。ガラス基板の面精度が悪いとその上に蒸着するクロムにも影響するので、その影響を取り除くために、ガラス基板は表面を光学研磨して面精度をλ/10程度にした。クロム膜の均質度は加熱式真空蒸着器では限界があるので、現在、スパッタリング法によるクロム成膜を検討中である。 2.測定システムの開発 100μm程度の流路幅のマイクロチャネルとキャビティリングダウン分光法を組み合わせるために、顕微鏡を利用した測定システムを作製した。現在、作製した測定システムの性能を評価している。
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