本年度は研究実施計画に基づけば、昨年度作製した微細流路(マイクロチャネル)を利用したキャビティ(多重反射セル)を用いてキャビティリングダウン(CRD)測定システムを評価する予定になっていた。しかし、昨年度作製したキャビティは測定条件を満足させるに至らなかったので、本年度の最初はキャビティの作製を行なった。 1.キャビティの作製 昨年度は、加熱式真空蒸着器でガラス基板にクロムを蒸着してキャビティを作製したが、クロムの膜厚にばらつきがあり、キャビティ表面で光散乱され、透過率が悪かった。そこで、本年度はスパッタリングによって、精密に膜厚を制御してガラス表面にクロム薄膜を作製した。これにより、キャビティ表面における光散乱が抑えられ、キャビティを作製することができた。 2.測定システムの評価 昨年度試作した顕微CRD測定システムを用いて液相CRD測定を行なった。試料はサンセットイエロー(色素)水溶液を用いた。キャビティ長が50〜100μmの場合、溶媒の散乱が大きく、測定はできなかった。キャビティ長が10μmの場合は、CRD信号が得られ、原理的に液相CRD測定が可能であることが実証できた。感度に関しては、吸光法とほとんど変わらず、今後キャビティ長をさらに短くするなどの改良を加えれば、高感度が可能だと考えられる。
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