アンダーポテンシャル析出(UPD)を利用した電気化学的原子層エピタキシー(ECALE)は、得られた半導体薄膜の膜厚や表面形態を原子レベルでコントロールできることから、新規な半導体薄膜作製技術として特に注目されている。本研究では、ECALE法をもちいて、金電極上にZnSおよびCdS薄膜を交互に積層することによりCdS/ZnS超格子((ZnS)_<m+0.5>/((CdS)_l/(ZnS)_m)_n/Au)を作製し、その光電気化学特性について検討した。 硫黄および亜鉛、カドミウム原子層のUPDの際に流れた電気量から析出量を計算したところ、一層目の硫黄は0.76×10^<-9>molcm^<-2>であり、この値は一層目の硫黄がAu(111)面上に(√3×√3)R30°構造で析出した場合に得られる値とよい一致を示した。これに続くUPDにおいては析出する元素の種類に関わらず、約1.2×10^<-9>molcm^<-2>となった。この値は立方晶ZnS(111)面およびCdS(111)面における原子密度に近い値であることからCdS/ZnS薄膜が[111]方向にエピタキシャルに成長していることを示唆している。 CdS層を3分子層に固定し、ZnS層の厚み(m)を1〜3分子層と変化させたCdS/ZnS超格子電極の400nm光照射における見かけの量子収率(Φ_<app>)を求めた。いずれの厚みのZnS層を用いた場合においても、超格子の構成数(n)が増大するにつれ、Φ_<app>は直線的に増大し、各CdS層が同じ光電気化学特性を有していることがわかった。一方、ZnS層の厚みが小さくなるほどΦ_<app>は増加したことから、光電流の大きさは、CdS層中に光生成した電子のZnS層を通過する確率によって決定されていることが分かった。
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