研究概要 |
我々は、室温以上で安定なガラスを容易に形成する低分子系有機物質(これを、アモルファス分子材料あるいは分子性ガラスと呼んでいる)の創製に関する一連の研究を行っており、その物性研究の一環として、分子性ガラスにおける電荷輸送の研究を行っている。本研究は、分子性ガラスにおける電荷輸送特性を分子構造と相関させて検討し、高移動度を有するアモルファス分子材料を創製するための分子設計指針を確立することを目的としている。本年度は、フェニル基の置換位置が移動度に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、新規アモルファス分子材料、N,N'-di(biphenylyl)-N,N'-diphenyl-[1,1'-biphenyl]-4,4'-diamine誘導体(o-,m-,およびp-BPD)を設計・合成し、それらの分子性ガラスにおける電荷輸送特性を検討した。 o-,m-,およびp-BPDのホールドリフト移動度は、温度293K、電場強度1.0x10^5Vcm^<-1>において、それぞれ、6.5x10^<-4>、5.3x10^<-5>、および1.0x10^<-3>cm^2V^<-1>s^<-1>であり、密度より求めた平均分子間距離はいずれもほぼ同じであるにもかかわらず、移動度は、フェニル基の置換位置により一桁以上異なることが明らかとなった。移動度の電場強度および温度依存性をdisorder modelにより解析した結果、これらの物質の移動度の差は、主にエネルギー的disorderの差に基づくことが明らかとなった。エネルギー的disorderの差は、主に分子構造の揺らぎの差に基づくと考察した。
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