平成12年度は、電気化学インプランテーションによる窒化物薄膜形成のモデルケースとして、Fe-N、Co-N、Cr-N窒化物に関して、形成条件と得られる窒化物の相関を明らかにすることを第一の目的とした。その結果、Fe-N、Co-N、Cr-N、いずれの窒素濃度も、電解電位が貴である試料ほど、高くなることが分かった。即ち、電気化学インプランテーションを用いることで、電解電位により不定比性の遷移金属窒化物中の窒素濃度を、容易に制御出来ることが示せた。 次に、形成させた窒化物薄膜についてXPS、X線回折、DTA、TEM、SEMなどを併用して、マクロスケールからアトミックスケールまでの解析を行い、本手法による窒化物形成メカニズムの解明を行った。その結果、吸着窒素の化学ポテンシャル、形成した窒化物中での窒素原子の拡散速度および、表面形態等の様々な要因が、窒化物形成に影響を与えていることが分かった。 これらの研究と並行して、窒素ガスの陰極還元反応を利用した高効率なナイトライドイオンの供給を可能とする窒素ガス電極を目指し、電極材料と構造に関し検討を行った。具体的には、様々な金属を電極材料に用い、それぞれについての分極特性を評価した。その結果、ニッケルが最もガス電極に適していることが示された。また、ニッケルに触媒となる金属を担持することで、更なるガス電極の性能を向上させることが可能となることも示された。
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