本年度の研究で明らかになった主な知見 1.有機官能基としてフルオロプロピル基もしくはクロロプロピル基を有するシリコンアルコキシドを出発原料として、ゾルーゲル法により近紫外可視域が透明なEu^<3+>イオンドープ有機無機複合体を作製することができた。この複合体は、SiOSi結合を骨格としていることから化学的耐久性が高く、無色透明であることから光学材料として適用可能であることを見出した。 2.有機官能基(フルオロプロピル基もしくはクロロプロピル基)を変えることにより、Eu^<3+>イオンの第一配位球のの環境を変えることができた。すなわち、有機官能基によりEu^<3+>イオンまわりの結合状態を制御することが可能となった。したがって、Eu^<3+>イオンまわりは擬似的にハライドガラス類似の構造をとっていることが推測できる。 3.錯体化したEu^<3+>イオンをドープした有機無機複合体にエキシマレーザーを照射することにより、Eu^<3+>イオンをEu^<2+>イオンに効率よく還元することができた。また、この還元効率はレーザー照射時の照射波長に依存し、Eu^<3+>-Clの電荷移動遷移に相当するエネルギー(波長)が一番効率が高いことを見出した。このことから、レーザー照射によりEu^<3+>-Cl結合がラジカル的に開裂し、Cl・はEtOHにトラップされ、Eu^<3+>・はEu^<2+>に還元されると推測した。 4.錯体化したEu^<2+>イオンの蛍光特性は有機官能基により、このことにより近紫外域における発光波長位置や発光波長幅を変化させることが可能であることを見出した。すなわち、近紫外域の発光波長および発光波長幅を自在に変えることが可能な蛍光体が作製可能でありことを今回見出し、このことは近紫外域固体レーザーの開発に大きく近づいたといえる。
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