研究概要 |
オキシスルフィド系ガラスは、通常の溶融急冷法で系内に多量に硫黄を含有する事ができる系として知られており、酸化物ガラス中での硫黄の追跡に最適な系である。ガラス工学上よく取り上げられる酸化物系組成を基本にして、最初にアルカリ硫化物とガラス網目構成酸化物による二成分系ガラス:R_2S-MxOy(R=Li,Na,K;MxOy=SiO_2,B_2O_3,GeO_2)の作成を行った。 作成した試料は、組成に対応した着色の変化が連続的に観察され、ガラス中への硫黄の残存が確認された。また本系ガラスは、対応する酸化物系ガラス組成と比較して、高アルカリ領域までガラス化が可能である事が判明した。 各試料のXPS測定から、S2pスペクトルのシグナルは161eV付近に観測され、ガラス中の硫黄は単体の硫黄結晶より低原子価のS^<2->として存在している事が判明した。このS2p Binding Energy値はNa_2Sにおける値とほぼ等しく、本系ガラス中での硫黄はイオン結合性の強いS^<2->として存在していることが考えられる。また、Na_2S-SiO_2系ガラスの^<29>SiMAS-NMR測定から、硫黄を配位したシリコン原子の存在が確認でき、ガラス中の硫黄は一部が酸素と置換してガラス網目構成成分となっている事が判明した。更に、本系ガラスのO1sスペクトルの面積強度比から求められる非架橋酸素の割合は、高アルカリ領域で酸化物系ガラスと比較して小さくなっている事が分かり、本系ガラス中の硫黄は非架橋酸素部位を選択的に占有している事も判明した。 今後はこれら二成分系ガラスの結果をもとにして、硫黄を含有したボロシリケート系ガラスやソーダライム系ガラス等の三成分系ガラスを作成し、ガラス構造に硫黄が与える影響について検討を行う予定である。
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