研究概要 |
カルボン酸塩化物とチオシアン酸塩との反応から調整されるアシルイソチオシアナートを過剰のアルカンテルロラートと反応させることにより、N-アシルテルロチオカルバミン酸Te-アルキルエステル[RC(=O)NHC(=S)TeR´]を淡黄色針状結晶として収率20〜40%で合成・単離できることが明らかとなった。 今回、得られたN-アシルテルロチオカルバミン酸Te-アルキルエステルは何れも空気中で、熱ヘキサンを用いて再結晶できるほど安定であるのに対し、既に我々が合成単離しているN-アシルセレノテルロカルバミン酸Te-アルキルエステルが空気中室温で、数分以内に黒色テルルを遊離して完全に分解するのと大きく異なる安定性が認められた。 得られたテルロチオエステルの内で、トルエン誘導体[4-MeC_6H_4C(=O)NHC(=S)TeMe]の単結晶化にも成功し、そのX線結晶構造解析まで行うことができた。分子内でトルイル基のカルボニル酸素がテルルに配位する1,5-相互作用の存在が明らかとなり、その結合角(162°)から、酸素原子上の不対電子軌道(N_O軌道)とテルル-メチル炭素間の非結合性軌道(σ^★_<Te-C>軌道)との相互作用であると考えられた。またこの様にして得られたテルロチオエステルを塩基処理し、α-ハロカルボニル化合物を反応させると、分子内でブタンテルロールの脱離を起こし、複素環化合物を中程度から良い収率で与えることも明らかとなった。
|