研究概要 |
(アリルオキシ)シリルリチウム化合物の分子内転位反応において,オレフィン末端の置換基により位置選択性が異なることを見出した。ヘキシル置換体では[2,3]-シラ-Wittig転位が進行し,アリルシランが生成したのに対して,フェニル置換体ではシリルリチウムはオレフィンの2位炭素上で反応し,シクロプロピルシランが生成した(シクロプロパン化反応)。アリル炭素上に不斉を導入することで,これらの転位反応において高い不斉保持率で不斉転写が進行することを見出した。 位置選択性をさらに無置換体,トリメチルシリル,トリフェニルシリルおよびチエニル置換体で検討した。その結果,無置換体およびトリメチルシリル置換体では[2,3]-シラ-Wittig転位が進行したのに対して,トリフェニルシリルおよびチエニル置換体ではシクロプロパン化反応が進行することを明らかにした。さらに(プロパルギルオキシ)シリルリチウム化合物において同様の置換基をアセチレン末端に導入し,置換基効果を検討した。ヘキシル置換体では[2,3]-シラ-Wittig転位が進行し,アレニルシランが生成した。これに対してフェニル,トリメチルシリル,トリフェニルシリル,およびチエニル置換体においては,シリルリチウムはアセチレンの2位炭素上で反応し,ビニルシランを与えた。この置換基効果を非経験的分子軌道法により解析した。その結果,置換基がオレフィンまたはアセチレンの炭素上の最低空軌道の係数に大きな影響をおよぼしており,これが反応の位置選択性を決定していることがわかった。
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