シクロファン型糖クラスターを用いたDNA複合体の構築と性質本研究においてはリン酸イオンと相互作用することがわかっているオリゴ糖クラスターを合成し、DNAとの複合体形成について検討した。また、オリゴ糖クラスターの糖鎖の長さを二糖から七糖へ系統的に変えて、糖クラスターの会合挙動やDNAとの相互作用がどのように変化するかを調べ、糖鎖-DNA相互作用について解明することを目的とした。具体的な成果は以下のとおりである。 1.糖クラスターの合成 グルコースを単位とするオリゴ糖(二糖、五糖、六糖、七糖)をシクロファン骨格に8個導入した糖クラスターを合成した。シクロファン骨格には同時にアルキル鎖を導入したことこから、両親媒性の分子特性を有することがわかった。 2.糖クラスターの会合挙動 両親媒性糖クラスターの水中における会合形態や会合特性を透過型電子顕微鏡観察および動的光散乱法により評価検討した。動的光散乱法による解析から、水中では粒径3-10nmの小さな会合体と200-500nmの大きな会合体を形成していることがわかった。大きな会合体は透過型電子顕微鏡観察によっても確認され、ベシクル様の会合形態をとっていることがわかった。 3.糖クラスターとDNAとの複合体形成 糖クラスターとプラスミドDNA(pBR322)との複合体形成はゲル電気泳動から確認した。また、子牛胸腺DNA複合体を形成することも融解温度の高温側へのシフト、円二色性スペクトルにおけるCD強度の変化から確認された。糖クラスターの鎖長が長くなるにつれて、これらDNAとの相互作用が強くなることが示唆され、糖鎖-DNA相互作用の解明に関する重要な知見が得られた。
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