ナノ・マイクロメートルサイズで区画化されたヘテロ界面を用いて、機能性高分子、生体高分子、細胞組織、金属や半導体微粒子の表面への固定化が可能となり、化学・バイオ・光学センサー等のあらゆる分野での素子開発が試みられている。単分子膜パターニング法により作製されるヘテロ界面の有用性が指摘されながらも、それを形成するための材料ならびに方法は現在限られている。このような背景で高価な装置や試薬を用いない新規作製法の開発、また環境保全の観点から完全水系での作製法の開発が待望されている。本研究では、水系で作製できる単分子膜パターニング法に主眼を置き、研究に取り組んでいる。本年度は、光二量化反応性を有する発色団を1〜3個有する光反応性ジー、テトラー、ヘキサカチオンの3種類のカチオン性吸着分子を合成した。固体表面での光二量化反応、また光二量化反応に由来する逐次高分子化反応にともなう吸着分子一分子当たりの吸着点数の増加が、表面に物理吸着した分子の脱着耐性に与える影響を系統的に調べた。具体的には、(1)物理吸着によるカチオン性分子の金属酸化物表面への配置、(2)フォトマスクを介した吸着膜の選択露光、(3)電解質を含む水溶液による未露光部の現像の過程を紫外可視分光法ならびに界面化学的な手法を用いて解析を行った。その結果、1分子当たりの基板表面との静電相互作用点が光反応により増加し、物理吸着した分子の脱着耐性が抑制でき、水系で約10μmの水平解像度を有するパターン化単分子膜が形成されうることを見出した。さらに、約100nmのシリカ粒子をパターニング表面に作用することにより、選択吸着が引き起こされ、固体表面上に存在する単分子膜パターンの潜像を可視化できることを見出した。
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