研究概要 |
本研究では、ポリ(アントリレンエチニレン)を主鎖骨格とした共役ポリラジカルを合成することで、次元拡張による磁気結合の強化および光機能とのハイブッリッド化を実現することを目的としている。今年度は、種々の置換基を有するポリ(アントリレンエチニレン)を合成することで、高分子鎖間の相互作用について予備的な知見を得た。また、モノマーラジカルのESRから、そのスピン状態について基礎的な知見を得た。 1.フェノキシル置換したアントラセンについて半経験的分子軌道計算に基づき、2,7-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノキシル-および2-ガルビノキシル-置換ポリ(9,10-アントリレンエチニレン)等を分子設計した。 2.種々の長鎖アルキル基やフェノール残基を有する9-ブロモ-10-エチニルアントラセンモノマー、またはジブロモアントラセンとジエチニルアレンとをパラジウム錯体触媒により重縮合することで、分子量数千におよぶ可溶性のポリマーが得られた。かさ高位置換基にも関わらず重合し、置換基がポリマーの溶解性に対して有効であることを明らかにした。 3.対応するモノマーバイラジカルでは、溶液ESRスペクトルのスペクトルシミュレーションから算出した超微細構造定数、および77Kのトルエングラス中で観測されたg=4の三重項スペクトルから、アントラセン骨格を介した不対電子間の強いスピン交換相互作用が明らかとなった。一方、ガルビノキシルを有するモノマーラジカルでは、等間隔で5本に分裂した超微細構造より不対電子がガルビノキシル骨格にほぼ局在化していた。 4.モノマーバイラジカルのSQUID測定による温度と磁化率の相関について、理論式からカーブフィッティングして算出した交換相互作用定数2J>104cm4^<-1>は、バイラジカルがアントラセン構造の共平面性に対応して大きな強磁性的相互作用を有することを明らかにした。
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