研究概要 |
先に報告した重合条件では、モノマーのアリル部位の二重結合が三置換の場合、反応性が極端に低下し重合しなかった。テルペンのオレフインはその多くが三置換であり、触媒の反応性向上が最重要課題であったため、反応条件、特に配位子の徹底的な検討を行った。 二座配位子の2つのリン原子間に4つの橋かけ炭素をもつ1,4-ビス(ジフェニルホスフイノ)ブタン(DPPB)は、橋かけメチレン炭素が1から4の配位子のなかで唯一重合を可能とした。そこでDPPBの構造に類似した4つの橋かけ原子をもつ配位子、2,2-ビス(ジフェニルホスフイノ)-1,1-ビフェニル(BINAP)やその誘導体、および1,2-ジオールをモノクロロホスフイン(CIPR_2)で処理したビスホスフイナイトなどを配位子に用い、酢酸ゲラニルとメチルマロナートジエチルエステルとのモデル反応で触媒配位子の検討を行った。BINAP配位子は、その骨格が剛直でありながら軸の適度な自由度により、不斉配位子としてだけでなく一般的に有用な配位子であることが知られており、重合配位子としても比較的優れていることが分かった。強い電子供与性配位子を有する0価バラジウム錯体は、容易に酸化的付加を受け2価バラジウム錯体を生成しやすいことから、立体的、電子的効果の調整が容易なビスホスフイナイトを用いて重合検討も行い、有機合成、およぴ有機金属化学的なアプローチを含め、実用的な重合反応の確立しつつある。
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