前年度までに、大きな歪エネルギーを有する環状アセチレンとしてシクロオクチンをモノマーとして用い、種々の遷移金属触媒による重合を検討した。その結果、RhやPd、あるいはNiなどの各種後周期遷移金属触媒によって対応するポリマーが良好な収率で得られることを見出した。しかしながら、生成ポリマーはいかなる有機溶媒に不溶であり、製膜などの加工性に欠如することが明らかとなった。そこで本年度は、ポリ(シクロオクチン)の薄膜を創成するための技術を構築することを目的として検討を行った。 ポリ(シクロオクチン)薄膜の合成は、界面重合法を適用した。すなわち、水溶性Rh触媒を用い、Rh触媒水溶液へシクロオクチンのペンタン溶液を滴下することにより、海面上で重合を行った。その結果、良好な収率でポリ(シクロオクチン)薄膜が得られることを見出した。モノマーの滴下量を変えることによって、膜厚を制御することが可能であり、数〜数百μmのポリ(シクロオクチン)薄膜が得られることが明らかとなった。 IRスペクトルによって得られた薄膜がポリ(シクロオクチン)であることを確認した。薄膜は白色であり各種溶媒に不溶であった。また、紫外領域に吸収を持ち、光励起によって青色の蛍光を示すことがわかった。気体透過性の測定結果から、薄膜には多数のミクロポアが存在することが示唆された。
|